地獄谷野猿公苑について
地獄谷野猿公苑とは
地獄谷野猿公苑は、長野県の北部、上信越高原国立公園の志賀高原を源とする横湯川の渓谷に位置しています。 険しく切り立った崖に囲まれ、噴泉が絶えず噴煙を上げている、そのような光景に、いつしか人々はこの地を地獄谷と呼びました。標高850m、地獄谷の冬は厳しく1mを越える雪に覆われ、最低気温が-10℃を下回ります。人間を除く霊長類の生息北限とされる下北半島と比べても引けをとらない厳しい環境です。
地獄谷野猿公苑は、1964年開苑以来、ニホンザルの興味深い生態を間近で観察できる場所として、広く世界中の人々に愛されています。また、多くの研究者や写真家も訪れ、数々の成果を上げています。
また、温泉に入るサルとしても知られ、1970年、米「LIFE」誌の表紙に掲載され海外にも報道されました。1998年の長野冬季オリンピックの際は選手、大会関係者、報道関係者等、世界中からの人々が大勢訪れ、話題となり、広く世界中に知られるところとなりました。
餌づけとヒトづけ

ニホンザルは北海道・沖縄を除く日本各地の山林地帯に広く生息しています。
しかしニホンザルの生息する山林地帯は深く、険しく、簡単には見つかりません。 また、運良く見つけられても、非常に離れていたり、移動してしまったり、間近でじっくり観察できるものではありません。
そこで餌づけという方法を使い、だれでも簡単にサルを観察できるようにした施設が野猿公苑です。
サルは学習能力が高く、食べ物の嗜好もより旨いものを好む、餌づけしやすい動物といえます。餌づけにはサルたちが普段食べているものよりも少し上等の物を用います。そこに行けば旨いものがいつでも食べられるということをサルたちに憶えてもらい、習慣付けるのが餌づけです。それと同時にヒトがいても危険がないことを憶えさせるのがヒトづけです。
餌付けでは、栄養過多になりすぎたり、本来の生態が損なわれたりしないように配慮しています。餌づけはサルたちを観察できる状態にとどめておくためで、餌を与えることが目的ではありません。餌をあげたいと考えるお客様もいらしゃると思いますが、当公苑ではお客様からの餌やりは禁止しています。餌の販売も行っておりません。
当公苑は、より自然に近い状態でニホンザルを観察していただける施設です。そのため、ヒトとニホンザルを隔てる柵もなく同じ空間で自由に観察していただけます。
世界で唯一、温泉に入るサル
昔からサルたちが温泉に入っていた訳ではありません。
餌づけに成功し、サルたちが野猿公苑にいる時間が多くなると、エサを待つ間ののんびりする時間が出来ます。ある時、何かの偶然か子ザルが野猿公苑のすぐ近くの後楽館の露天風呂に入ることを覚えました。冬の寒いときに温泉に入っていると温かく気持がよかったのでしょう。
徐々に仲間の子ザルや他のサルもつられて温泉に入ることを覚えました。
ヒトの温泉にサルが入っては衛生上好ましくないので野猿公苑内にサル専用の露天風呂を作りました。以来、代々、サルたちの間に温泉に入る行動が受け継がれています。

サルたちが温泉に入るのは-10℃を下回る、冬の地獄谷の厳しい寒さをしのぐために身につけた知恵です。ですから、夏の暑い盛りや温暖な時期には入る必要がないので、積極的に温泉には入りません。
温泉に入ることは、サルたちの生活のほんの一部分でしかありません。温泉に入るのが嫌いなサルもいます。温泉に入るのが好きなサルでも、エサを食べること、仲間とのコミュニケーションの方が大切です。サルたちにとって温泉はなければならないような重要なものでありません。
ヒトのように体の汚れを落とし清潔にすると言った目的もありません。ただ、温泉に入り体が温まると気持ちいがいいのはサルたちも同じ、その表情を見れば一目瞭然です。うとうとと目を閉じ、居眠りをしているサルもいます。雪の激しく降る寒い日には温泉に入るサルも多く、中には何時間も入っているサルもいます。